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National Golf Foundation College Textbooks
THE GOLF FUNDAMENTALS
-  ゴルフ経営原論  第一部 ゴルフビジネス  -
第二章 プロモーション
Section 3 練習場常設のプラクティス&エクササイズプログラム

練習場は本来ゴルフコースの付帯施設として造られていた。1970年代に入り日本にゴルフブームが起こるや、俄かにゴルフコースが不足しはじめ都市近郊に続々と練習場が建設されるようになった。土地本位制度に支えられた経済成長に伴って地価が高騰したため、土地所有者や遊休地を所有する企業は資産管理目的に最も適した練習場を競って建設し始めたのである。
練習場を選んだ理由は誰でもできる現金商売であること、建設と撤去が容易であること、地価高騰が激しく固定資産税、金利、減価償却を補って余りあるキャピタルゲインが得られることなどが挙げられる。都市近郊農家から大手上場企業まで地価高騰に浴する遊休地は全て練習場になったといっても過言ではない。従って日本のゴルフ練習場は最初からゴルフ事業ではなく、不動産管理業としてはじまったと考えなければならない。その証拠に日本型練習場はゴルフブームと不動産ブームが同時に起きた日本、韓国、中国以外の国では殆んど見られない事業形態なのである。
俄かなブームによって需要と供給のアンバランスが生じ、そのギャップを埋める代替補完事業として都市型練習場が誕生したと考えるのが順当である。そのために練習場は面倒なことは絶対しない不動産管理業に徹したものと考えられる。今でも多くの練習場がレストランや喫茶、ショップやスクールをやりたがらないのは経営コンセプトが基本的に異なるからである。不動産バブルの崩壊と地価下落によって多くの練習場がキャピタルロスに陥り、事業存続の目的やメリットを失って撤退していったが、今後ゴルフ事業としてマーケットに残るには、新たな戦略に基づく明確な事業コンセプトに従って経営されなければならないだろう。

練習場ソフトプログラム

練習場の事業目的は本来キャピタルゲインを狙った資産管理手段のひとつであったが、不動産投資ブームが終った現在では、もっぱら固定資産税の納税原資を捻出する財務管理手段になっている。多くの練習場オーナーもしくオーナー会社は、経営目的をゴルフビジネスではなく不動産管理ビジネスと考えているから、ゴルフのソフトプログラムや教育には余り関心がなく、ユーザーが練習場にソフトプログラムを求めても提供されることはめったにない。本来なら練習場にはプラクティスやエクササイズプログラムが用意されていなければならないはずだが、練習場はあくまでも打球練習する場所としてバッティングセンターと同じ機能しか持ち合わせていない。
練習場ソフトプログラムを大別するとドリル、プラクティス、エクササイズ、コンテストの四種類に分けられる。

 

ドリルとは原理形成のことで、スイングメカニズムを構成する生体原理や物理原則を身体に覚えさせる(馴化)機能をもつ。
プラクティスは同じ動作を反復練習することで、正確な反復再現性を養う機能をもつ。
エクササイズは実戦演習のことで、やり直しが許されないゴルフゲームに対して緊張感の中で目的達成率を高める機能をもつ。
コンテストは実戦的に目標に対する成功率や達成率をデジタル認識する機能がある。

 

従来、練習場で行われている練習といえば大した目的もなく球数を打ち続けることだったが、練習場の打球練習にソフトプログラムを導入することによって、もっと練習効果を高め実践力を養うことができる。今では多くのゴルファーが練習場から誕生するようになったが、練習場にソフトプログラムがないと我流スイングをつくってしまう。我流でつくったスイングは格好が悪いだけでなく、多くの欠点を内包している。

 

第一に生体原理や物理原則に反しているために身体や飛球に悪影響を及ぼしている場合が多い。
第二に自分のスイングに自信や確信がないために常に他人の言動に左右される。
第三に基本がないと調子が悪くなったとき戻る原点がない。
第四に我流は球数を打たないと実力維持できないため身体障害を起こし易い。
第五に生涯にわたり自分の最高パフォーマンスを発揮できない。

 

ところが練習場もインストラクターも我流スインガーが練習熱心なベストカスタマーであるために、余計なことを言って機嫌を損なわぬよう何も言わないことが多いのである。本来、練習場のプロモーションとは顧客の練習動機を高め、ゴルフ上達の方法を提供するものでなければならない。前章に取り上げたNGF打席調査による「3年以上当該施設を利用する顧客は8%以下」という結果も、練習場にプロモーションソフトがあれば、もっと利用率や定着率を高めることができるかもしれない。「練習しなければ巧くならない」と言っていた人が3年経たないうちに「練習しても巧くならない」と言うからには余程の理由があるのではないか。

スイング形成プログラム

我流スインガーの悲劇は最初にこのプログラムに出合えなかったことにある。子供の頃は簡単にプロのスイングを見て真似できたものが、大人になるに従って段々真似できなくなる。妙なスイングをするために先輩や上級者から色々注文を付けられ、やがて世にも珍しいスイングが身に付く。自分でも気になって本を読み漁り、色々なプロのレッスンを受けた結果は、ついに世界でも類を見ないグロテスクなスイングが完成する。「恥ずかしくて練習に行けない」「人に見られたくない」という人がいるが、実際はどんなスイングか是非とも見たいものである。
米国も長くこのような我流中心の時代が続いた。『ゴルフ基礎原論』で詳しく述べた如く、ゲーリー・ワイレンが『法則原理選択の理論』を発表するまでスイングを巡る誤解と混乱は日常茶飯事だった。しかし21世紀に入って地球規模で情報共有化の時代が始まり、日本でも若い人にグロテスクなスイングを見ることはなくなったものの、中高年ゴルファーは依然として変わらない。
練習場ソフトプログラムのうちスイング形成に関しては<NGFスイング形成ドリル映像テキスト>を常設すればよい。このドリルは全米学校体育指導に取入れられている基本ドリルを8種類に体系整理したもので、体型・性別・運動能力の関係なく誰にでも普遍的に適応する。
ゴルフスイングは一見して簡単な動きに見えるが、未経験者や初心者にとって決して簡単ではない。それどころか経験を積むほど、安定してボールを飛ばすことが如何に難しいか理解しはじめ、やがてゴルフとは究極2秒足らずのスイングが全てであることを悟る。
スイング形成するにはドリルと素振りの反復練習が最も効果的といわれている。ほとんどの人がスイング形成をせず最初から打球練習を始めるが、これが我流スイングをつくる原因となっている。野球・卓球・テニス、柔道・剣道・空手などいずれもフォームづくりが基本であることからも理解できよう。
練習場にとって大切なプロモーションは、未経験者が練習場を訪ねる動機を作ること、練習したくなるようなモチベーションを与えること、上達する秘訣を提供することに他ならない。口で何と言おうが、誰もが心では美しいスイングを身に付けたいと思っているし、もっと上手になりたいと思っている。練習場が本来提供する商品はこのようなソフトプログラムであることは間違いない。

矯正プログラム

スイングドリルは初心者のスイングを形成するだけでなく我流スイングを矯正するにも効果があり、永年かけて完成させたグロテスクなスイングも知らぬ間に流麗なスイングに変える魔力がある。中上級者が長年かけて培った悪性スイングは、通常さわれば触るほどこじらせてしまうインストラクター泣かせの厄介者で、多くの場合は本人自身が諦めている。「下手なヨコズキ」といわれるこのようなベストカスタマーに「プロのようなスイング」「うらやまれるスイング」「自慢のスイング」を提供できればこれ以上のプロモーションはない。
カスタマーが望むサービス商品とは、まさに自分を変えてくれるソフトプログラムであることは間違いない。練習場に常設したいソフトとして<映像スイング診断装置>がある。かつて各種のスイング診断装置が考案されたが、その多くはスイング再生装置に終わりもう一歩診断装置に至らなかった。理由は開発者がハード研究者でソフト研究者ではなかったことによる。自分のスイングを見せられたカスタマーは二度と見たくないと思ったものだが、矯正ソフトが伴っていれば段々と美しくなる自分の姿を何度でも眺めたに違いない。このように練習場に矯正プログラムがなかったことによって、我流スインガーは自分のスイングに自信を失い、やがて練習嫌いとなり向上心も失っていった。

エクササイズプログラム

ゴルフは練習と実戦を異なった施設で行うユニークなスポーツゲームである。それゆえに練習成果が実戦に現れずに悶々とするゴルファーが多いが、エクササイズとは演習の意味で、実戦を想定して練習することにより実戦力をつける。
練習場は球数を打ってくれる人をベストカスタマーと考えているから、どんなに無駄球を打っても決して咎めることなく「有難うございます」と言うだろう。果たしてそれで良いのか判断に迷うところであるが、経営戦略的には間違っているはずである。練習場の存在意義はゴルファーを育てるところ、技術向上させるところであるはずだから、実戦向上に役立つプログラムを備えていなければならないはずである。
ゴルフが距離と方向のターゲットゲームであり、距離と弾道のコンとロールゲームであることを考えると、自ずと練習に対する考え方が変わり次第に実戦を想定した演習になるはずである。実戦では何ヤード先の何処の地点にボールを運ぶかターゲットが示され、ランでも良いかキャリーでなければいけないか弾道条件も設定される。そのうえ一回失敗したらOBでない限り打ち直しは許されないから、次の状況に対応して距離・方向・弾道を定め前回と異なるショットを試みなければならない。このようにゴルフは毎回条件の異なるショットを連続させ、ホールアウトするまでの打数を競うゲームだから、同じショットを反復練習しているだけでは同じミスの連鎖を助長する。

 

そこで練習場には次のようなエクササイズプログラムが望まれる。

 

(1) ターゲットエクササイズ
フェアウェイの50,75,100,125,150ヤードにフラッグ又は標識を設置し、50,100,150と75,125を別々に色分けする。それぞれのターゲットをランで捉える場合とキャリーで捉える場合のクラブとスイングの大きさを習得する。フルスイングの飛距離を計測するためではなく、ターゲットに対するコントロール意識を養うエクササイズである。

 

(2) ドライビングエクササイズ
フェアウェイ180ヤード、幅40ヤードの地点に二本のフラッグ又は標識を設置して、ドライバーないしフェアウェイウッドがフェアウェイを捉える感覚を養う。この場合もフルスイングの飛距離を測定するのではなく、あくまでもフェアウェイを確実に捉えるスイング感覚を養うことが目的である。

 

(3) ステイショナリーエクササイズ
プレーするホールを想定し実際に順番にショットしていく練習を行う。例えば500ヤードのホールをプレーする場合を想定して、第一打ティーショットが成功したら200ヤード、当りが悪ければ180ヤードと想定する。残り300ないし320ヤードをフェアウェイウッドで打ち、成功したら180ヤード当りが悪ければ160ヤードとする。残り120から160ヤードを何で打つか判断し、成功したらスリーオンしたことになるし失敗したらアプローチをする。このように距離を変え、クラブやショットを変えて打ち直しが利かないことを前提に実戦的な練習をする。

殆んどの練習場はショット専用打席を備えたドライビングレンジで、ショートアプローチやバンカー練習場は備えていない。本来なら当然備えられるべきとも考えられたが、実際は余りに利用者が少ないため取り壊されたところが多い。従って練習場プログラムは専らショットに関するエクササイズプログラムを用意すれば充分と考えられる。一般的な傾向としてアプローチ・パットやバンカーの練習をする人は少なく、ショットの練習ばかりしている人が多いが、本来なら練習量を逆にしなければ上級者になれないことは上級者だけが知る事実だ。