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National Golf Foundation College Textbooks
THE GOLF FUNDAMENTALS
-  ゴルフ経営原論  第一部 ゴルフビジネス  -
第二章 プロモーション
Section 2 ニューゴルファー育成ファーストティープログラム

市場低迷衰退期には、あらゆる需要が低迷衰退して、それを放置すればマーケットそのものがどんどん縮小していく。日常生活に欠かせない衣食住などの生活必需品ですら縮小するときに、ゴルフのような贅沢な遊興娯楽とみなされる消費が減少することは、どうしても避けられない。人口減少社会と同じで根本原因は出生率の低下、つまりニューゴルファーの誕生が減少するわけで、このような時代はニューゴルファーを育成する積極的なプロモーション(振興策)が必要とされる。我国でも50年前は政府が産児制限や家族計画を推進しなければならなかったものが、現在では少子化担当大臣をおいて人口減少に歯止めをかけようとしている。
このようにゴルフ人口の減少や消費の減少に対して対策を講じることをゴルフプロモーションというが、一言でいえばゴルファーを増やすこととプレーの回数を増やすことに尽きる。1970年代のように自然増加が激しい時代では想像もつかないが、ゴルファー誕生から育成までは確かなプログラムが必要で、養殖や栽培のような緻密なプランとケアによって支えられなければならない。
まずゴルファーが誕生するには、強い動機付けとして強烈なゴルフとの出会いを必要とする。ブームの時には取引先の接待や社内コンペ、友人や同窓会などゴルフの誘いが頻繁にあって、断るのに苦労する時代であったから特別に動機を作る必要がなかったが、現在ではゴルフに誘われることすら少なくなった。そこでゴルフ未経験者を、いきなりゴルフコースに誘うのがファーストティーというプロモーションプログラムである。
ファーストティープログラムは従来の概念を覆す企画提案だけに、周到な計画と準備が必要であるが、既成概念や一般常識に縛られると実行することができない。既成概念や一般常識とは

 

 (1) ゴルフはエチケットルールから始まるゲームである。
 (2) ゴルフは18ホールを一人でプレーするものである。
 (3) ゴルフは一組4人以内でプレーするものである。
 (4) 競技中は他人のクラブを使用してはならない。
 (5) 競技中は他人の助言・援助をうけてはならない。

 

などであるが、ファーストティープログラムは全て無視してはじまる。ファーストティーとはビギニングという意味である。

ファーストティープログラム

 

ステップ1 オルタネイトショットゲーム  (オルタネイト = 交替で の意)

 

3、4人から5、6人を一組として、中に経験者が一人いればあとは全員未経験者で差し支えない。何人いても一球を全員が順番に打っていくことを大原則として、人により場合によりボールを手で投げることもできる。グリーンに乗るまで順番を変えずに打っていき、全員の合計打数を競うゲーム方式である。
このプログラムは家族友人・仲間同士がエチケットルールを無視した「ゴルフごっこ」を楽しむ遊びであることを理解しなければならない。各組ともボールは一個、クラブは数本あれば充分で全員が一個のボールをグリーンに乗るまで順番に打っていく。ゴルフ未経験者がゴルフとの強烈な出会いをつくることが目的であるから、うるさいことは後回しにして、ゴルフゲームの楽しさを味わうことに徹することが大切である。
ステップ1ではエチケットもルールも知らないことを前提にして、パットゲームのないショットゲームだけを行う。グリーン上のエチケットルールを学ぶまでは、パットゲームを行わない方がコースも傷まず参加者も楽しい。

 

-オリエンテーション-
(1) 未経験者に最初からコースでプレーさせることは、それ自体大きな冒険である。初体験を感動的にすることが強烈なモチベーションとなり、プロモーション効果を高める。
(2) 経験者を一人入れることはプレーの進行上および安全管理上大切な要件となる。経験者が一人いれば意外にプレー進行は早くパットをしないので遅れることはない。
(3) 危険防止以外のエチケットルールは細かいことをいわず、ボールに触れると一打になることだけを基本ルールとする。打てない場合は手で投げて一打とする。
(4) このゲームは6ホールから9ホールで充分である。コースレイアウトを調べ、クラブハウス近くから出てクラブハウス近くに戻るコースを設定する。
(5) 料金は廉価(5000円以下が理想)に設定すること。また参加者がクラブやシューズを新たに買わなくて済むよう配慮すること。クラブは一組に手引カート5‐6本セット。服装はカジュアルウェア、ウォーキングシューズ、帽子着用で充分とする。

 

ステップ2 オルタネイトマッチゲーム

 

2~4人がチームとなり、オルタネイトのマッチプレーをする。○○さんチーム対△△さんチームがホールマッチをすれば家族ぐるみで楽しめるが、家族でなくても仲間、会社、学校、町村、男女、老若など全く自由にチーム編成して差し支えない。
チーム対抗戦なのでチームワークと対抗意識が高揚するように演出する必要がある。未経験者や知らぬ者同士が遠慮し合っては、通夜の焼香のように意気消沈した雰囲気になってプロモーションにならない。未経験者や初心者が夢中になって楽しむためには、赤ボールと白ボールを使って紅白対抗戦を演出したり、勝ったチームに賞品を出すのもインセンティブになる。
このゲームではストロークプレーによらずマッチプレーで行うことが重要で、各ホールでチームが結束して戦うことによって、仲間意識が高まりゴルフの楽しさを味わうことができる。
この段階でもエチケットルールは厳しく言わず、ゲームに熱中させることが大切である。9ホールマッチで充分だろう。

 

-オリエンテーション-
(1) ファミリーゴルフの時代といっても家族全員がゴルフをする家庭はめったにない。ゴルフというゲームがビギナーにとって、バリアが高いことに原因がある。
(2) バリアの一番目は未経験者に対するコースの拒絶反応であり、二番目は18ホールフルコースメニューしか用意されていない点にある。
(3) 家族や仕事仲間がチームワークで他人と競い合う機会などめったにない。家庭や職場の絆が失われた現代社会に一石を投ずることになるかもしれない。
(4) オルタネイト方式である以上、料金はチーム料金制にすべきで原則一人料金でチーム参加できることが望ましい。競技参加費を追加しても差し支えない。
(5) 定期的にトーナメントを開催すれば、頻繁にチームで練習しに来るだろう。

 

ステップ3 スクランブルゲーム
3人ないし4人でチームを組み全員マイボールをプレーするが、セカンドショットから全員で相談して、最も良いポジションにあるボールを選び、各自ボールをピックアップして選択した場所に集合し、全員がその地点からショットする。
第三打以降も同じ要領でプレーを続け、誰かがホールアウトした時点でそのホールを終了するが、バンカー内を選択すれば全員バンカー内から、誰かがグリーンに乗せてもグリーンの外を選択すれば全員外からショットする。
チームリーダーや経験者の自己主張が強いとチームの和が乱れて良いスコアが出ないが、チームワークが良ければ生涯スコアが出せる不思議なゲームである。
このゲームはお互いのミスをカバーし合うので、ひとり一人のプレッシャーが少なく、初心者も上級者も全員楽しめる点が特徴であるが、コースマネジメント、ナビゲーティング、スコアマネジメント、クラブ選択の勉強になるので、トレーニングプログラムとしても優れている。

 

-オリエンテーション-
(1) スクランブルゲームは独立したひとつのゲーム方式で、決して初心者専用のゲームではない。初心者やビギナーでも協力し合えば有頂天になれる夢のようなスコアが出せることからプロモーションゲームの代表になった。
(3) 個人的な対決や勝ち負けを競うゲームを好まない現代風潮の中で、料金体系が安くなればプレーの少ないゴルファーにとっても気軽に参加できるイベントになるだろう。
(3) 従来ゴルフは徹底した個人競技という概念が定着しているが、このゲームを体験すれば楽しい団体競技でもあることを理解するだろう。
(4) スクランブルは団体競技でありながら個人プレーに走り易い性格を持っている。上級者であっても個人プレーに走るとチームスコアは良くならない。
(5) スコアを必ずつけること、チーム成績を公表することは個人個人やチーム全体のモチベーションを高め、プロモーション効果も高い。

 

参照:
映像アーカイブ / National Golf School 40Lessons : スクランブルゲーム

 

ステップ4 ペアスクランブル
2対2で行うスクランブルマッチプレー。全員マイボールをプレーし、各チーム二人で相談して良い方のポジションを選択し、その地点から同じ要領でプレーする。同じタイプの二人がペアを組むより、一般的にタイプの異なるペアの方がチーワークが良い。
テニスや卓球のダブルスに類似し、個人競技の性格が強いゴルフにとっても新鮮な楽しさがある。特に混合ダブルスに匹敵する男女ペアスクランブルはお互いのミスをカバーし長所を利用しあえるので、親交の浅いペアも仲の悪い夫婦も、案外楽しくプレーできる特徴がある。
通常のストロークプレーはお互いが自分のプレーに夢中になってしまい、励まし慰めて相手をサポートすることを忘れて、返ってお互いの欠点ばかり目に付き仲を裂いてしまうことすらある。若い男女が生涯の伴侶を見つけるにも、老夫婦が余生を楽しむにも、ライバルに対抗して二人が協力し合うこのゲームはゴルフ振興以上に社会的価値がありそうだ。米国では新たなカップルを引き合わせ、古いカップルの絆を深めるのに役立っているようで、クラブ競技としても行われている。
ペアやパートナーに技量の差があっても、適切なハンディキャップがあれば互角の勝負をすることができるが、ファーストティープログラムでは経験が浅く技術が未熟でも、存分にゴルフを楽しめることが分かれば目的は達成される。
第一打では女性がレディスティーを使用するので案外男性が助けられることが多い。
セカンドショットも飛距離が劣っても女性の方がフェアウェイキープ率が高いので、ホールアウトするまでどちらの貢献度が高いか分からない。

 

-オリエンテーション-
(1) ファーストティーとして取り上げた四種のゲーム方式は、オルタネイトのストロークとマッチプレー、スクランブルのストロークとマッチプレーである。
(2) 団体競技方式で未経験者や初心者を受け入れることによって、抵抗なくゴルフゲームに親しみ、ゲーム進行やエチケットルールを覚えられる利点がある。
(3) この四種類のゲーム方式はチームでボールを追いながら相談し、作戦を立ててクラブやショットを選択するので、マネジメントのトレーニングに役立つ。
(4) この種類のゲームでは本来、乗用カートは要らない。乗用カートがあるとチームプレーの妨げになり進行が遅くなる。個人用手引きカートが最適。
(5) これらのゲームはビギニングプログラムというより、新しい仲間を歓迎するとう意味でウェルカムプログラムというべきである。

 

参照:
映像アーカイブ / National Golf School 40Lessons : ペアスクランブル

ファーストティーの意味

ファーストティーは米国ワールドゴルフファンデーションが、ジュニアゴルフ普及のために企画したプログラムの名称で、一般的には使われてない。一般的には大人も子供も含めてビギニングプログラム、ウェルカムプログラムとする方が好ましい。
従来コースの受入体制は余りにも保守的・硬直的で、未経験者や初心者を全く受け付けなかった。以前は練習場すら受け付けず、80年代になってNGFがナショナルゴルフスクールを全国の練習場に開設するようになってようやく受入態勢ができた経緯がある。しかし、それ以来30年間ゴルフコースにはいまだに受入態勢はできていない。時代の移り変わりに従って古いゴルファーが消滅し新しいゴルファーが誕生するのに、何処でゴルフゲームを習うか誰も考えなかったとは誠に奇妙な話ではあるが、供給サイドの規制に阻まれてマーケティングが進まなかったと考えるべきだろう。
経済低迷期や市場縮小期にあって、新規参入企業が新しい市場や顧客創造を狙ってマーケットに名乗りを上げるのは時間の問題のように思われる。ファミリーレストラン、コンビニエンスストア、回転寿司、スタンドコーヒー、宅急便、ケータイ、ユニクロ等いずれも硬直したマーケットに新たな概念やシステムが導入されて、新しいマーケットが創造されたものである。