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HOLY GOLF BUSHIDO
-  神 聖 ゴ ル フ 武 士 道  -
新和魂洋才のすすめ
日本の伝統精神 + 英国の伝統文化
第7章 誠実と正直

武士の誠実

「武士道」はいくつも例を挙げて、『真実と誠実がなければ、礼は茶番であり芝居である』という。さらに『伊達政宗は「度が過ぎた礼はへつらいとなる」という。菅原道真は「心だに誠の道にかないなば、祈らずとても神や守らん」と戒めた。孔子は誠を尊び「誠は物の終始なり、誠ならざれば物なし」と熱心に説いた。武士は嘘をついたりごまかしたりすることは、卑怯者のすることとみなした。武士の約束は通常、「武士の一言」として証文無しで決められ実行された。むしろ証文を書くことは武士の面子が汚されることであった。故に「二言」つまり二枚舌のために死をもってあがなった壮絶な逸話が多く語られている。』と述べて武士が命に懸けても誠実と正直を守ろうとしたことを証明している。
武士道精神のDNAが流れる日本人は一般的に誠実で正直だと評されている。日本人社会で余り評判の良くない私も、米国ゴルフ界では絶大な信用がある。これは私の評価ではなく日本人の評価と思い、先人たちに限りなく感謝している。1990年米国ゴルフ設計家協会のダン・メイプル会長を日本に招聘したとき、メイプル氏は重要書類や講演資料が入ったバッグを成田空港に置き忘れてしまった。ホテルに到着してそのことに気付いたメイプル氏とマネージャーは顔面蒼白になったが、私は彼らに「心配御無用、ここは日本です」と平然としていたが、彼らは米国に電話したりホテルのフロントに電話して大騒ぎをしていた。案の定、夕食前に空港事務所からホテルに電話があり「宿泊者ダン・メイプル氏のバッグが事務所に届いているから、2時間以内にホテルに届ける」といってきた。私は「だから言ったじゃないの、ここは日本ですよ」と平然を装ったが内心とても誇らしく思ったものだ。空港事務所の話によれば、バッグの名札に書かれた電話番号に連絡し、宿泊ホテルを聞き出して届けたとのこと。国際社会では考えられない日本人のアイデンティティである。

ゴルファーの正直

ゴルフにとって誠実と正直は命である。プレーヤー自ら審判を務め、スコアをごまかさず正しく申告することを求めるゴルフは、自分が有利になるよう裁定したり、スコアをごまかして不正申告するものを競技失格にするだけでなく、人間失格の烙印を押すほど厳しい掟によって成り立っている。ゴルフは徹底した個人競技だから、いくらでも人の目はごまかせる。ロストボールしたとき、別なボールでプレーを続行しても誰もわからない。OBラインを少し越えていても、さっさと打ってしまえば証拠は残らない。空振りを素振りと言い張れば、それ以上誰も追及しない。ボールを確認する振りをしてラフやディボット跡に沈んだボールを僅かに動かすことは簡単なことだ。林に打ち込んだボールが木の真後ろにあって打てないとき、僅かに動かしたことを誰が見ていよう。ゴルフは神の目を意識せず良心が咎めなければ、いくらでも不正ができる恐ろしい競技なのである。だから欧米のメンバーコースには、プロテスタントでなければ会員になれなかったり、プレーができないコースもある。日本人と中国人ゴルファーは無神論者が多いから信用されないことが多い。
信用されるには「わたしはサムライだ。武士に二言はない。」と言うしかあるまい。武士道ゴルフを勧める理由は、日本人よりも欧米人のほうが武士道を理解しているし信用しているからで、もしそれを裏切る日本人がいたら打ち首にする以外に手はない。 ゴルフマインドとかゴルファーズオネスティという言葉がいつ頃から使われ始めたか定かではないが、最近はほとんど聞かれなくなった。不要になったとは思えないから、忘れられてきたと考えるべきだろう。そろそろ復活させないと死語になる恐れがあるから、ここいらでもう一度考え直してみよう。日本でも昔はよくこの言葉を耳にしたが、どのような場面で使われていたかを思い出してみると、
 * 大叩きしたホールで最終パットまで真剣にプレーしなかったとき。
 * 悪いスコアをボロコースのせいにして文句を言ったとき。
 * OBを打ったのはキャディーの不注意からだと責めたとき。
 * 雨が降って機嫌を損ね、やる気を失ったとき。
 * 調子が悪くて周囲に当り散らしたとき。
 * スコアの言い訳を執拗にしていたとき。
 * 誤球やスコア誤記を正直に訂正申告しなかったとき。
 * ルールを知らなかったことにして違反行為を謝罪しなかったとき。
 * 自分のプレーに夢中で周囲の配慮に欠けたとき。
 * ジャッジが自分自身に有利であったとき。
このようにゴルフの世界ではゴルフマインドとかゴルファーズオネスティという言い方で絶えずゴルファーに誠実と正直を求めてきた。それは決して強要したり、ガミガミお説教するものではなく、極めて紳士的に何気なく気付かせてくれるものだった。それは「二度とすまい」という決意になったり「終生忘れまい」という教訓になったものである。
ある団体戦で遅刻者を出したチームが優勝してしまったことがあったが、表彰式に入る前にそのチームのキャプテンから優勝辞退の申し出があった。しかしその誠実な姿勢に他のチーム全員から万雷の拍手で、そのチームの優勝が承認された。
ある個人戦の競技会の朝、夜半から季節外れの暴風雨となり、朝になってもとてもゴルフのできる状態ではなかったが、何の連絡もないので会場に出向いてみたところ、一人の遅刻者も欠席者もなく40人ほどの選手は全員参集した。競技委員長から「荒天につき競技を延期します」という挨拶があっただけでその場で解散したものの、後でつくづくと「遅刻せずに行ってよかった」と思ったものである。またゴルフ場の玄関付近には、忘れ物を陳列する棚や籠があって、そこにはウェッジ、ヘッドカバー、帽子、ボール、時計、タオルからティーまで陳列してあって、持ち主が取りにくるまで決して無くなることはなかった。
このようにゴルフゲームは「ゴルファーは誠実で正直である」ことを前提に成り立っていたから、子供の教育や社会訓練にも大いに役立ったのである。