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National Golf Foundation College Textbooks
THE GOLF FUNDAMENTALS
-  ゴルフ基礎原論  第二部 ゴルフマネジメント科学  -
INTRODUCTION

英国型伝統精神ゴルフは、自然の中で精神力を競うゲームであるのに対して、米国型科学管理ゴルフは、人間のマネジメント能力を競うゲームである。状況に対して判断と対応を誤れば、決定的なミスとなってパフォーマンスに繋がらないから、プレーヤーのパフォーマンスを追及するマネジメントゲームとも考えられる。
ゴルフは本来プレーヤー自身の能力と責任によってボールを打ち、順番にホールアウトしていく単純なゲームであるが、ゲーム全体に4時間を要するのに、実際のプレーそのものには僅か3分しか要しない。1ラウンド4時間をかけて平均90ストロークならば、プレー自体のスイングに要する時間は1スイング2秒×90回=180秒=3分ということになる。ではプレー以外の約4時間は何なのか。ボールを追って歩いているだけではなくマネジメントという頭脳プレーをしているのである。事前の計画や方針通りゲームは進んでいるか。状況変化はないか。このポジションからノーマルショットが可能か。成功確率は。コースの状況は。自分の調子は。別のルートや選択肢は。
最善の状況判断から意思決定し、確信した選択手段を実行することをマネジメントというが、実際は如何なる計画も意思決定も結果は僅か2秒のスイングで決まる。しかし、本来のマネジメントは結果が出てから始まるもので、Plan-Do-Seeの基本に従って結果を検証し、フィードバックないしステップアップして次の計画に進まなければならない。このようにマネジメントとは、場当たり的な状況判断や結果論をいうのではなく、短期・中期・長期の計画に従ってPlan-Do-Seeを反復継続し、より高い目標に向かって進化していくことをいう。

ピーター・ドラッカーによればマネジメントという概念を最初に確立したのはアメリカ人フレデリック・ウィンスロー・テイラーである。テイラー自身は熟練工ではなかったが、熟練技術者たちのテクニックを分析研究して、それらを一連の単純反復動作に分解した。分解された単純反復動作を更に検証して無駄を省き合理化した。部分部分は極めて単純化された動作を一連のシステムとして再構築し、その品質を低下させることなく生産性を飛躍的に向上させた。そしてその技術を奉公や修行によるのではなく、システムトレーニングによって誰でも熟練技術を修得できるようにしたのである。テイラーの最大の功績はこの教育訓練システムによって高品質・低コスト・大量生産を可能にし、産業革命を成功させて20世紀の繁栄基盤を築いたことにあった。ドラッカーは労働組合やギルドからボロクソに言われたテイラーこそ20世紀最大のヒーローだという。世にテイラーの科学的管理法-Scientific Management-に基づく生産性革命といわれているものである。
ゴルフの世界にマネジメント概念が導入されたのは1970年代と考えられるが、米国ゴルフ界にイノベーションが起きた時期と同じである。USGAはコースレーティングやハンディキャッピングに大変革をもたらそうとし、コース設計家たちはロバート・T・ジョーンズ思想に倣ってターゲットゲーム用にコース設計概念を変え始めていた。PGAとNGFはボールフライトロウの影響を受けてワンスイングの確立と9種弾道の打ち分けを主流とする思想に変わっていたし、クラブメーカーは用途別・機能別にクラブ選択できるオプションギアの開発に乗り出していた。このように米国ゴルフ界はいろいろな分野にイノベーションが起きつつあり、第三次産業革命といわれる情報通信革命の時流に乗っていたことが分る。
情報通信革命はコンピューターの発達やインターネットの開発と密接な関係があり、知識や技術の情報化と伝達処理の進化に伴って起こったものと考えられる。だからゴルフマネジメント概念は的確な情報処理による最適パフォーマンスを追及する過程で、プレーヤー側に起こったイノベーションと考えてもおかしくない。

ピータードラッカーの説に従い、マネジメント概念の起源をテイラーの科学的管理法に求めるならば、マネジメント概念がアメリカ人の手によってアメリカ社会に発達したテクノロジーであることに間違いない。米国は最も高度なマネジメント社会を構築した国であり、マネジメント概念も技術も米国社会を見なければ到底理解の及ぶところではない。米国ゴルフ界は英国型伝統精神ゴルフを源流としながらも、米国独自の科学技術ゴルフという領域を開発し、アメリカ人が得意とするマネジメントテクノロジーを導入したと考えられる。それはまさにラグビーという英国型伝統精神球技を、アメリカンフットボールという米国型マネジメント球技に変えてしまったことに類似する。伝統精神がよいか科学技術がよいかという比較優劣の問題ではなく、それぞれに特性と特徴があって両者の比較研究の問題であると考えなければならない。

ゴルフのマネジメント科学は始まったばかりの領域で、まだ文化だの科学というには早すぎる気がするが、内容を検証すると立派なサイエンステクノロジーであることが分る。この領域をセルフマネジメント、コースマネジメント、スコアマネジメント、ゲームマネジメント、マネジメントサイエンスの5章に分けて検証するが、まだ始まったばかりの領域なので多分に仮説性や独善性が混入することは避けられない。それを割り引いても、ゴルフマネジメントの領域はゴルフ愛好者にとって充分に興味深く参考になることは約束できる。