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National Golf Foundation College Textbooks
THE GOLF FUNDAMENTALS
-  ゴルフ基礎原論  第一部 ゴルフゲーム  -
第二章 セオリー  INTRODUCTION

セオリーのはじまり

スイングの変遷は用具の進化とともにあったから、用具の進化なくしてスイングセオリーの確立もありえなかった。ゴルフの長い歴史の中で、用具の製造はマニュファクチャーとしての職人芸に依存してきた。職人が腕によりをかけてひとつひとつ工芸品として制作していたから、手間隙かかるうえ高価なものになった。そのうえ品質や性能を揃えることは高度な職人技術を要したから自分に合ったクラブを誂えるなどということはめったに無く、それは王侯貴族か大金持ちの道楽でしかありえなかった。一本のクラブは親子三代友人知人と多くの人たちに譲り渡され、何度も何度も使いまわされ貴重品として扱われてきたのである。だから最近までは「自分に合ったクラブ」という概念すら一般になかったといえる。ということは、ゴルフを始めたときから譲り受けたクラブに合わせて、自分のスイングを作らなければならないことを意味した。
そのうえフルセットを譲り受けることは、よほど良家の師弟か素質を見込まれた若者でない限りありえないことだった。スペインを代表するあのバレステロスでさえ父親から貰った5番アイアン一本でプロになったというくらいだから大方想像できよう。プロや達人といえども、一本一本のクラブに合わせて自分自身のスイングを調整しなければならなかったのである。極論すればプレーヤーの数だけスイングがあったというより、クラブの数だけスイングがあったというべきかも知れない。従って統一スイングだの基本スイングなどというのはそれ自体が非常識な話だったのであり、そしてこの話は百年も二百年も前の話ではなく、1970年代まで続いた話なのである。ゴルフに関しては科学的研究だの基本原理などといわれるようになったのは、20世紀もほぼ終わりに近づいてからと考えてよい。

科学的探究

本格的な科学的研究は1960年代に入って、大英ゴルフ学会-The Golf Society of Great Britain-の手によって進められた。既にスチールシャフトや樹脂製糸巻きボールの開発によって用具の安定性が飛躍的に向上した時代背景があってのことである。同時に米国ゴルフ財団-National Golf Foundationの手によって学校教育ゴルフの普及に伴う基本統一プログラムの開発が進められていた。この英米両機関による科学的開発研究はゴルフの近代化に大きな貢献をしたと考えられる。その証拠に、コースレートやハンディキャップに革新的イノベーションが起きたのも、指導や教育の世界が合理化したのも、用品開発が活発に行われるようになったのも全て1970年代以後のことであり、現代科学ゴルフの基盤はこの時期に形成されたと考えられるからである。
ゴルフ愛好家で豪州出身英国人アンスレイ・ブリッジランド卿がゴルフ研究のために莫大な資金を英国ゴルフ科学院に寄付したことにより、1961年ロンドンのゴルフ研究家や学者が集められ、アリスター・コクラン博士が中心となってあらゆる角度からゴルフの科学的実験や研究がなされることになった。その研究成果は1968年「Search for the Perfect Swing」というタイトルで発表されている。内容はいろいろな角度から35項目の重要テーマと3項目の補足テーマに関する実験ないし研究成果が発表されており、今日いろいろな研究が行われているが、大方はこの研究発表を基礎にしているものと思われる。

二大研究

米国では1960年代半ばにNational Golf Foundation ドン・ロッシー専務理事の指揮の下、学校教育プログラムの開発が行われた。ロッシー氏は全米から優秀な大学ゴルフコーチやPGAプロフェッショナルを選抜しNGF教育コンサルタントを編成して全米の学校体育にゴルフを導入するため、教育プログラムの開発に着手している。1968年ごろから「Golf Lessons」「Golf Instructors Guide」「Golf Coaches Guide」「Audio Visual Aides」「Competitive Golf Events」等が次々と発表されている。こんにち指導法が確立して全米の学校体育にゴルフが導入されたことは、このプロジェクトの功績である。 大英ゴルフ学会(The Golf Society of Great Britain)と米国ゴルフ財団(The National Golf Foundation)による二大プロジェクトチームの研究成果をゴルフに関する「二大研究」と称することにする。現代ゴルフを支える基本セオリーやメソッドはこの「二大研究」の成果に基づいている。

- 参 考 -
同じ時期に卓越した個人研究成果として「Five Lessons by Ben Hogan:1957」「The Golfing Machine by Homer Kelley:1969」などがあるが、近代ゴルフの確立にいささかの貢献をしている。しかし何といっても個人研究で最大の成果は「The Ball Flight Laws by Dr. Gary Wiren:1976」といえる。この研究によってレッスン界にイノベーションが起り、セオリーやメソッドの基本統一を可能にしたからである。