タグ : マニエル・デ・ラトーレ

ワンスイング・スクウェアシステム

こんな言葉を聞いたこともない人が多いかもしれないが、現代ゴルフスイングの真髄といっても良い。英語で<One-swing Square-system>と書くが、私自身も詳しく解説した文献を見たことがないし、米国のトップコーチから詳しく説明を受けたこともない。ひょっとすると未だ誰も定義付けしていないかもしれない。普段使っている言葉も余りに日常的だと、本来の意味を忘れてしまうことがある。「真剣になる」という言葉だって日常頻繁に使うが、本来は竹刀や木刀を捨てて本物の刀を抜くことだから、それこそ命懸けになることだ。私も子供の頃、友人宅の床の間に飾ってある日本刀を抜いて目の前に付きつけられたことがあるが、全身鳥肌が立って、まさに腰が抜ける思いを味わった。そのとき以来、真剣の意味を正確に理解した気がする。

 

「ワンスイング」とは「ひとつのスイング」「一定のスイング」という意味で、1970年代までは使うクラブ毎に、打ち分ける弾道毎にスイングを変えるものとされていた。ところが1976年、ゲーリー・ワイレン博士がPGAマガジンに「ボールフライトロウ」を発表し、弾道とスイングには直接因果関係がないことを立証してからワンスイングの概念が確立した。ゴルファーにとってドライバーからウェッジまで同じスイングで打つことは永遠の理想だったために、トッププレーヤーたちは競って「ボールフライトロウ」を学び実践しようと試みた。日本で最初にワンスイングを披露して見せたのは、私の知る限りジャック・ニクラウスである。NHK特別番組でニクラスはドライバーとピッチングウェッジを全く同じスイングで打ち、二重映像でダブらせて変わらないことを証明して見せた。

 

またサンディエゴで開催されたNGFインストラクターセミナーに特別講師として招かれたマニエル・デ・ラトーレが、クリーク(5番ウッド)を使って全く同じスイングから9種弾道を自在に打ち分けるデモンストレーションを披露した。至難の業とされたハイドローもロウフェードも、ボールフライトロウを説明しながら自由自在に打ち分ける姿に、私はじめ日本人参加者全員が仰天するどころか、まさに腰が抜けるような思いを味わった。米国では1970年代にワンスイングが確立したことをまざまざと見せ付けられたのである。その時まだ私は「ボールフライトロウ」がワンスイングを確立したことを理解していなかったが、今思えば真髄を理解するのも時間がかかるものだ。現代ではワンスイングは余りにも当たり前で「なに?」とか「なぜ?」って聞かれると「えっ?」と思う人が多いかもしれない。それだけ無視されているのかもしれないが、それが真髄であることを改めて考え直す必要がありそうだ。