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ゴルフの神髄

2010年4月18日サウスカロライナ州ハーバータウン・ゴルフリンクスで開催されたPGAツアー「ベリゾンヘリテージ」最終ホールで素晴らしいプレーが見られた。13アンダー同士でプレーオフになったジム・フューリック(米)とブライアン・デービス(英)は延長ひとホール目の第二打で決着が付くという珍しい幕切れに終ったが、ゴルフ史に残る美談になるのではないか。恐らく会場の観客は何がなんだか分からないうちに試合が終わり、ゴルフを知らないテレビ観戦者は何が起きたかも理解できなかったに違いない。

 

延長ひとホール目は最終18番ホールで行われたが、18番ホール左サイドは海岸で、グリーンの左側もそのまま砂地に雑草が生えたハザードになっている。ピンは危険な左サイドに立っており、デービスはセカンドショットを積極的にピンを狙っていったが、僅か左にそれて海辺のハザードに落としてしまった。優勝経験豊富なフューリックは、ピンに遠い右サイドの安全な場所にボールを運んだ。もっぱら観客の関心はデービスのボールが打てる場所にあるかどうかだったが、テレビカメラがアップした様子では、雑草と枯れ枝の間にあるボールは何とか打てそうである。数分間観察したデービスは意を決して、ピンの方向に難しいショットを敢行した。ピンより少しオーバーしたが難しいショットを成功させて観客は万雷の拍手を贈った。しかし当のデービスは深刻な顔をして競技委員を呼んで何か言っている。競技委員はトーキーで大会本部と何か話し合っている。フューリックも観客も何がなんだか分からない数分間の静寂が続き、やがて競技は続行された。フューリックが第三打をカップから数十センチに寄せたあと、デービスは第四打を打った途端歩きだしてヒューリックに握手を求めた。ハザード内で枯れ枝に触れたとして自ら二罰打を課したからだ。

 

ゴルフの神髄は「あるがままに打つ」ことと「自己審判制度」にある。違反行為は自ら判定して自分を罰しなくてならない。ゴルフ規則によればハザード内でアドレスしたときクラブヘッドは何物にも触れてはならず、違反すれば二打のペナルティーを課さなければならない。デービスのハザードからの第三打は誰の目にも鮮やかなショットだったが、デービス本人は「打つ時に何かに触れた」と主張して止まない。呼ばれた競技委員は大会本部に連絡を取り、テレビ局のカメラを再生してデービスの主張を証明したようだ。対戦相手のヒューリックが何も言わないのに、デービス自身が自分の違反を証明させて自ら敗北を決定した珍しい出来事であったが、それは久し振りにゴルフの神髄に触れる爽やかなフェアプレーとして世界中のゴルフファンを感動させた。